昨年N○Kで連続ドラマ化もされた「緒方洪庵浪華の事件帳」他、時代小説分野で近年活躍されている作者さんの新作。普通に面白い伝奇時代小説だったので、感想を書いてみる。
大坂夏の陣から八年。落城の際、真田幸村の嫡男・大助とともに落ち延びた豊臣の姫君・茜は、混乱の中で生き別れた弟の消息を求めて復興著しい大坂の町に足を踏み入れた。目立たぬように、と心がけていた彼女だが、ある日思わぬ騒動に巻き込まれて……というのが序盤のあらすじ。
とりあえず、序章の惨劇で、○○が悪役なのがちょっと珍しいなーとか思っていたら、本編開始後は序章の影が全く見えなくて、一瞬あれれ?となりました。さらに読み進めると「ああ、なるほど。こういう設定だからの演出か」と理解しましたが。
登場人物について。主人公の茜は、8年間の潜伏生活で文字通り泥を齧って生き延びたという過去は哀れに思うし、基本的に真面目な良い子だとは思うのだけど、今回の展開が展開だったことも手伝ってかインパクト弱めかな……。まぁ、終盤の意外な展開で成長フラグが立ったので、次巻以降期待してます。その他は、茜のお相手候補?の男性二人はそれぞれクセがありそうだなぁとか、お龍は箱入り娘だから力は足りないけれど良い子だなぁとか、腹に一物も二物もありそうな鴻池父や寺嶋老人が良い味出してるなぁとか、そんなことをつらつらと。
全体的には1巻目ということもあって、登場人物紹介編という感じかと油断してたら、終盤でそれまでの認識をひっくり返す爆弾投下。そういう展開でくるのか!とここでぐっと話にひきつけられた。何が真で何が嘘か、情報が足りないだけにまだ判断はできませんが……これから先どういう風に話が展開していくのか、とても楽しみ。
……ところで甲斐は某楽人一族関係の人という理解でよろしいか。よろしいですね。(自己完結)