久しぶりの古橋氏の新作は、秋山瑞人氏とのシェアードワールド企画「龍盤七朝」古橋パートの始動でした。戦場に現れ、吐き出す毒気だけで一軍を滅ぼすという「三首四眼五臂六脚」の怪物の物語。
以前発売された『IX』をより派手にしたような、武侠風味色の強い作品でした。この巻の内容としては、とある街で出会った3人が、いろいろあって旅立つまで(まとめすぎだ)
終盤までは、廉把と蘭茄、浪无のそれぞれ個性的な3人と街の人たちとのやりとりを楽しんだり、刺客との凄まじい死闘を堪能したりで、なんだかんだで正統派な貴種流離譚っぽい話になるのかなーと思いながら、のほほんとページをめくっていたのですが。油断してたら終盤に大天災が到来した。何あの問答無用で情け容赦とかそれに類する言葉が入る余地もないぐらいの叩き潰し。こういう大破壊とか惨劇をひょいと持ってくるのはある意味作者の持ち味ですかね……。「手」に証文を握らせようとする姿は一瞬壊れてしまったのかと思いましたが……最後の宣言に、あの暴威を目の当たりにしてなお、立ち向かう意思が挫けなかったのはすごいよなぁ、と素直に感心しました。
敵役は、もはや人間の枠を超えた荒ぶる神の化身とでもいうのか、こんなのどうやって斃すのよ、というレベル。しかし、最後の締めからすると新たに生まれる「怪物」がこの人を斃すかあるいは匹敵する強さを得ることは確定だろうし。加えて、今の「首が揃った」段階では比較的真っ当な精神の持ち主と思える「怪物」が、冒頭で語られるような凶悪性をどうやって育てていくのか。先の展開が気になるところでもありますね。