隣国・今居家の侵略により、父と兄を失い、十二歳という若さで応義家当主となった祥三郎。居城を今居の軍に囲まれ絶体絶命の状況に追い込まれた祥三郎は、隠居したかつての応義家軍師にして自身の大叔父にあたる長坂藤兵衛に助力を願う。はたして祥三郎は応義家再興を果たすことができるのか?
駒崎さんの新作は日本の戦国時代に架空の国を配置しての国盗絵巻。内容はざっとまとめると、元服したばかりでまだ幼く内気な少年(しかし聡明ではある)が、周囲の助けを得て失った城を、やがては国を取り戻そうと立ち上がるという、この手の話では王道な展開。幻想水滸伝とかあのあたりにハマった経験がある人にオススメできそう。いっそ泥臭いまでの王道展開を緩急つけて描き、見せ場もしっかり盛り上げてくるあたり、西洋史と日本史の畑は違えどもさすがだなぁという感じでした。
また、物語を彩る登場人物たちもなかなかに魅力的。健気な祥三郎はもとより、御家再興を願い幼い主君に忠誠を誓う家臣、協力者となる海賊や商人たち、さらにはかつて応義の家臣であったものの立身出世を志し今居に移った武将等々、それぞれ個性と癖のある人々が登場。それぞれの立場や想いから彼らがどんな行動をとっていくのか。それがちゃんと納得できるように描かれているので、物語がよりリアルに感じられたように思います。もちろん、中にはまだその真意が推し量れない人もいるのですが、まぁそれは次以降のお楽しみなんだろうしーというわけで、気楽にあれこれ予想して楽しんでます。
物語は序盤からそんなに藤兵衛の思惑どおりに進んでいいのか?と思うぐらいトントン拍子に進んでいたのですが、やはりそうそう上手く事が運ばないのが世の常で。思わぬところから(というか、情報管理を関係者に徹底させていなかったのが迂闊だったよな、と思う)一気に危機にさらされた祥三郎。彼と応義家臣たちを匿った村人たちを逃がすため、文字通り命をかけた武将の見事な最期には、涙せずには居られませんでした……。さらに、追っ手を逃れるため危険な賭けに出た祥三郎たちの安否は如何に、というところで以下続く。続きが気になりすぎるので、「もう少し成長した祥三郎の姿」(byあとがき)ができるだけ早く読めると良いなぁと思います。……ついでに、ちやちゃんも早くかわいい娘さんに成長して祥三郎との間に淡い恋心が芽生えてくれないものかとこっそり期待。