1年8ヵ月ぶりの新刊となる、「パラケルススの娘」第8巻。あんまり久しぶりだったので、前巻までの展開をほとんど忘れてしまっていましたが、読んでる間に何となく思い出したので良しとする。……ところでどーでもいいけど、MF文庫Jの今月新刊のなかで、表紙イラストが一つだけ雰囲気違うよねこれ。
肝心の内容はというと、一言でいえばシリーズ最終章・序章編といった感じ。冒頭で描かれた、クリスティーナ宛の「恋文」に使われてしまったある一家を襲った悲劇に軽く凹みつつ(『クリスマス・キャロル』、ふつうに好きなんですよね私……)、漠然とした不安を覚えながらも日常を、そして目前に迫ったクリスマスを楽しもうとする遼太郎たちの健気というか、シリーズ当初からずいぶん逞しくなった姿に、なんだか目を細めてしまいました。その一方で、どうにも不安定さを感じさせるのがクリスティーネ。遼太郎たちには変わらず傲岸不遜な態度を崩さないものの、レギーネの前では不安におびえる子供のような振る舞いをしている様子がなんだか痛々しかったです。仇敵の存在よりもむしろ、「変化すること」により怯えているのではと思えるクリスティーナに、レギーネは何かを思うのか。後に語られた過去を知ってからは、その疑問がより強くなりました。
中盤から語られるのは、クリスティーナとレギーネ、そして仇敵シモンの因縁。秘められた過去の真実は、これまで断片的に語られてきた情報からの推測とそう大きく違いませんでしたが、完全な形を示されたことでいろいろ整理できてよかったなーと思いました。過去話で一番印象に残ったのは、「クリスティーナ」の「祈り」の正体が描かれるところ。あそこはちょっと鳥肌ものだった。
そしてラスト。これに関しては、そういう具合に動かすのか、と。クリスティーナの思惑はいくつか予想できなくもないけれど、実際のところはどうなんだろう。次巻以降の展開に期待です。
さて。あとがきによればこの巻で最終コーナーをまわったらしいので、あと1~2冊で完結というところでしょうか。クリスティーナと遼太郎、それぞれの運命がどのように動いていくのか。残された「家族」はどんな動きを見せてくれるのか。次の巻がとても楽しみです。……次はできるだけ早く発売されると良いなぁ。