人によっては麻薬並みの中毒性を持つ猛毒、じゃなくて独特の作風で評判のトンデモ……じゃなくて伝奇小説作家・荒山徹氏。その作品の中でも、いろんな意味でトップクラスにひどいよこれ(褒め言葉)と思われる『柳生雨月抄』が改題して文庫化。ああちなみに、荒山作品に多少慣れてるならともかく、あまり耐性がないor初体験にこの作品を手に取ることは個人的に全くオススメしませんのであしからず(←おい)
内容を要約すると、陰陽術・剣術ともに超一流の技を修めた最強ヒーロー・柳生友景があの手この手で日本侵略を狙う悪の朝鮮妖術師が率いる組織と闘う連作短編集(要約しすぎ) ……改めて文章にするとどうしようもなくアレな話だよなぁと、今更ながらしみじみ思った……。えーとちなみに、短編集『十兵衛両断』に収録されている「太閤呪殺陣」の続編ともいえる作品であり、先日同じく文庫化された『柳生薔薇剣』と若干のリンクがあり。読む順番的には、『両断』→『陰陽』→『薔薇』(→『百合』)。
ネタ部分があんまりにもあんまりすぎるのでうっかり忘れてしまいそうになるんですが、実は基本のストーリィラインは普通に面白い伝奇小説だったりします。主人公が最強すぎてあまりピンチに陥らないのでそういう方面ではやや物足りなさもありますが、最初から最後まで無茶苦茶やっていながら最後には史実にあわせて落としてくるあたりは普通に巧いと思うし。
しかし、繰り返して言いますが、ネタ部分があんまりにもあんまりすぎる。そのおかげでいろいろと台無しになるのが荒山作品クオリティなのですが、この作品もその例にもれず。とりあえず妖術とか霊的とかいえば何でもおっけー状態なのはいつものことだからいいとして(いいのか)、某日本史上最凶級の大怨霊の改心を筆頭に、いくらなんでもモ○ラはないんじゃないかとかどこの特撮映画だよという巨大生物とかなにかヅ○に恨みでもあるのかそれとも逆に好きだからこそこうなるのかとか生首は酷過ぎるだろうとか、ツッコミどころが多すぎて多すぎて。読んでて笑いの発作に襲われること必至。
まぁそんなこんなで、ネタ部分のあまりのひどさに頭を抱えたり爆笑させられながら、奇をてらうだけにとどまらず、やりたい放題な展開の影でしっかり繰り広げられている人間ドラマ等は普通に面白くて、時にはあーそういうふうに繋げるのかーと感心したりうっかり感動してしまいそうになるという(うっかりかよ) なんというか、つくづく性質が悪いというか理不尽だよなーとしみじみ思わされる怪……もとい力作です。