第11回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作の復刊。ちなみにこの時の大賞は宇月原晴明氏。
どういう風に内容を表現すればいいのかとても困るんですが、端的に表現するならなごみ系地球破滅小説ということになるんでしょうか。……矛盾した単語がくっついてるように見えますが、事実そうとしか表現しようのない内容なんだから仕方がない。読みながら、こういうちょっと変わった作品が世に出してくれることが数年前までのファンノベ大賞の魅力だったんだよなぁ……としみじみ思った。いや別に最近の作品が悪いというわけじゃなく、なんというか良くも悪くも「普通」の賞になってると思うのですよ。
愚痴はさておき。あらすじは、異動を命じられたとある製薬会社勤務の研究者が、起死回生を図って新製品の中に1本だけ紛れさせた開発段階の育毛剤「BH85」。それがひょんなことから地球規模の大変事を発生させてしまう……というもの。設定的には悲壮感や絶望感があってもおかしくないというかないと嘘だろうという感じなのですが、本文中にはそれらがほぼ皆無。奇妙なほどの緊迫感のなさにつられて、気楽にさっくり読めてしまいます。軽いばかりではなく、「意識の在り方」についての洞察など軽く哲学っぽい要素もちりばめられていて、それがまたこの作品の不思議な面白さを補強している感じ。
で、新種の生命体(作中では最終的に「ネオネモ」と呼ばれるようになる)がものすごい勢いで地球上の全生命体と融合していく中、一定の確率で取り残された人々は別にネオネモと戦うでもなく、流石に何度かはパニック状態になるものの、もうこれはどうしようもないよねーみたいなノリでそれぞれ状況に適応して生活したりネオネモへ接していく様子が、なんともいえない独特の味に仕上がっています。
まぁこういう形の終焉(?)というのもそれはそれでありかもね、みたいな気分になる、最後までとぼけた雰囲気の話でした。
ネオネモですよ
うわ、素で間違えてました(恥) 修正しておきます。
ご指摘ありがとうございました。