「〈本の姫〉は謳う」、第3巻。これまでと同じく、スペルの回収を続ける少年アンガスとその仲間たちの冒険と、地上に落ちた天使の青年アザゼルの視点から描かれる過去の悲劇が交互に語られていきます。
今回も、期待通りに面白かったです。「現在」のアンガスの物語はある意味王道と言ってもいいような流れなんですけど、やっぱり見せ方が巧いのかな。読んでいて非常にわくわくしてきます。そして、登場人物たちの使い方というか、物語の中で割り振られた役割と位置に無駄がないのもいいですね。アンガスの地味ながらも主人公らしい(痛い目に遭いながらの)活躍もさることながら、彼を支える仲間たちとのやりとりは心なごみました。終盤のアンガスとセラの会話がまたしみじみと良くて。彼らが希望ある未来を掴み取ってくれることを切に祈りたくなります。……それにしても、アンガスと愉快な仲間たちって、そのネーミングはどうかとちょっと思った。分かりやすいけど(笑)
一方、アザゼルの物語はと言うと……こちらは、おそらくどうあがいても悲劇に終わってしまうということが分かっているだけに、アザゼルたちに共感すればするほどなんともいえないやりきれなさも増していくというか。特に、アザゼルを愛するが故に「大地の鍵」として逃れられない運命に囚われていくリバティの姿が、貴くも哀しかったです。せめて4巻で2人の再会があることを、それができるだけ幸せな状況で実現されることを願ってやみません。あと終盤、リバティの足枷になるまいと、そして彼女を止めるためにアザゼルを死地から脱出させようと、これまで地上で縁を結んだ人々が生還が望めない戦いに身を投じる様子には、思わず涙が滲みました。
さて、現在と過去の物語の双方が終幕に向けて動いていますが……微かながらも希望の光が見える過去の物語はどのような経緯で悲劇に転じてしまったのか、現在の物語は絶望を跳ね返し希望を掴み得るのか。そして、全てのスペルを回収したとき「姫」が取り戻す記憶はどのようなものなのか。今はただ、最終巻の発売を待つばかりです。