テロの脅威に晒されている都市・ミリオポリスの公安局要撃小隊(MSS)に所属する3人の少女たちの物語、第4巻。
凄かった。とにかく凄かった。正直に言って、両「シュピーゲル」シリーズ2巻で描かれたあの事件を超えるほどの興奮は、そう味わえるものではないだろうなーなどと考えていた自分が甘かった。富士見ファンタジア史上最厚を更新した(らしい)ほどの分量にもかかわらず、一度話が転がりだすともはや最後まで読む手を止められなくなり、結局最後まで一息で読んでしまうぐらい。ただ、圧巻だったとしか言いようのない物語。
ミリオポリスで開廷される戦犯法廷に招かれた「七人の証人」。彼らを守り、ひいては法廷を成立させるためにMSSが死力を尽くして戦う、というのが今回の大雑把な内容。この証人たちは言うまでもなく初登場でしたが、作中で行われるあるTRPGを通じて、彼ら彼女らの人柄が自然と理解できるのは、良い演出だなぁと思いました。ここで行われたTRPGも、ある意味でマルドゥックのカジノに通じるものがあるんじゃないかと思えるほどの異様な緊迫感で手に汗握りました。そんなこんなで一人一人に思い入れが生じたあとで、ああいう展開は酷としか……。残された言葉があまりに重く、流された血や涙に胸が迫ります。
あと見ものだったのは、「オイレン」組との共同戦線。二組で追っている事件はそれぞれ違っているのですが、ひょんなことからそれぞれの小隊長が携帯電話を通じて互いに情報交換をしあうことになり。鳳と涼月、水と油とまではいかなくても正反対に近い気性の二人の会話は、互いに怒声を浴びせたり嫌味っぽいことを言ったりしているにも関わらず、あまりに過酷な物語の中での息抜きのように感じられたのがなんとも不思議。この二人がなんだかんだ言いあいながらもお互いを認めているというのが分かるから、そう感じるのかな。作中の登場人物の言葉通り、良い組み合わせと何となく納得するものがあります。
そんな電話での情報交換だけに留まらず、終盤で図らずも実現した、別の隊員たちに指示を下す、あるいは別の小隊長のもとで任務をこなすというシチュエーション。これがまたテンションあがりました。つーか、涼月の描写がやたらと男前で格好良かったような気がするなー。このあたりの互いとの絡みは「オイレン」側でどのような描写がなされているのか。そもそもMPBの面々はどんな状況で戦っていたのか。月末には読めるだろう「オイレン」4巻が待ち遠しい限りです。
シリーズ全体を通して大小様々な謎が増えつつある中、あと2冊で完結というこの物語にどのような終幕が用意されているのか。今から楽しみで仕方がありません。
“『スプライトシュピーゲル IV テンペスト』[冲方丁/富士見ファンタジア文庫]” への2件の返信