吸血鬼と人間の共存地帯『特区』を舞台にした吸血鬼と人間たちの物語、「BBB」シリーズ短編集第5巻。
雑誌連載分の収録となる4編は、今ではもう遠い日々となってしまった、特区でのミミコたちの日常風景が懐かしくも楽しかったです。4巻ほどアレな内容ではないけど十分笑えるし、全体的に肩の力を抜いて面白く読めました。
書下ろしの過去編「月と太陽のモンタージュ」は、第二次大戦後から香港返還直前までの人類の軌跡を、寄り添うように変化を余儀なくされていく吸血鬼たちの視点で描いた様々なエピソードで繋いだ連作形式。歴史オタクにとっては、非常に楽しめる作品でした。歴史上の人物はおおむね名前が出てくる程度だったのは少し残念だったけど、まぁそうそう歴史的共演なんてあるわけないから仕方がないか。エルネスト氏が登場しただけでも儲けモノだろう。うん。
勿論、そういう要素だけではなく、本編に繋がっていく様々な流れも興味深くて。中でも、明かされた「豪王」誕生の経緯は、予想していたものとは違っていて良い意味で驚かされました。加えて、本編でお馴染みの面々に加え、既に舞台を去っているor表立っての介入はしてきていない大吸血鬼の人となりや在り方、あるいは変わり行く世相を反映したそれぞれの血族の岐路や立ち位置などを知ることができたりしたのも良かったです。ああそれから、なんとかハンス君に生き残って欲しくなったんですがどうしましょう(←ああいう話に弱い人)
さて、次は本編になるのか、短編集になるのか。どちらにしても待ち遠しいことには変わりないので、できるだけ早く発売されると嬉しいなー。