キャンパス文庫からルルル文庫に移動して復刊された、「封殺鬼」シリーズの一編。現在ルルル文庫で刊行中の「鵺子ドリ鳴イタ」の前日譚に当たります。
若干10歳で陰陽師・神島一族の当主となった少女・桐子と使役鬼二人との出会いから絆が生まれるまでと、当主となって初めての仕事に隠された意図を暴いていく、というのがこのエピソードの主軸になるのかな。
登場人物絡みでは、やはり桐子と聖、弓生の間の距離が少しずつ縮まっていく過程が良かったです。主従関係であるにはしろ彼らのように「桐子」という存在をまっすぐ見てくれる人というのは貴重でしょうからね……桐子の置かれていた境遇を思えば、どうしても。それから、ひょんな縁で知り合った術者・早臣の動向も気になるところです。……なんだか嫌なフラグが成立しているように見えるのは気のせいだと思いたい。あと、シィの話はなんとも切なかったです……。
陰謀方面では大きな進展はなし。徐々に大きくなっていく情報の齟齬は、果たして何を意味するのか。本当の「破壊者」は誰なのか――まぁ、「鵺子ドリ~」の情報からこいつが黒幕(?)だろうと見当がつく人はいるのですが、その人が何を考えて何を望んで動いているのか。それが明かされるのだろう下巻が楽しみです。
携帯で読めるオマケ掌編は「鵺子ドリ鳴イタ」エピソード後の一幕だそうで。なんだかんだでちゃんとお友達になってる桐子と志郎の姿には、直前まで桐子の孤独の根の深さを直前まで味わっていただけに、余計に微笑ましい気分になりました。