祖を同じくしながらも対立する二つの民――鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)。 二つの民が憎み争う翠の国だったが、ある時旺廈は鳳穐に敗れ、旺廈の頭領である薫衣(くのえ)は囚われの身となる。そして、鳳穐の頭領であり翠の王ともなった?(ひづち)は薫衣に、ある話を持ちかける。捕われの身となった王と、憎みあう二つの民を総べる王。二人が思い描いた理想は、はたして実現されるのか。
個人的偏愛率の高い日本ファンタジーノベル大賞出身の作家氏の新作。架空歴史系の作品ということで、購入。
カバーイラストがわりとかわいい感じだったのでもっと軽い話を想像していたのですが、想像以上に重く、深かった。周囲の無理解、憎悪、侮蔑、嘲笑――自身も含めた人間の心を相手に、時には己の手を汚しながらも数え切れない葛藤を乗り越えて苦難の道を切り開き進んでいく2人の姿。一見大きな波乱もなく地味な、しかし実際はとてつもなく困難な戦いに挑んだ彼らの生涯に、圧倒されたというか。全体的に派手さには欠けるものの、静かな迫力を備えた物語でした。
最後の、そっけないほどの一文で彼らの生涯をかけた戦いは無駄ではなかったのだと思うと胸にくるものが。しかし2人の王の、特に薫衣の成したことが本当に理解されるには、まだ長い長い時間が必要なのだろうなぁ……。
作品名 : 黄金の王 白銀の王
著者名 : 沢村凛
出版社 : 幻冬舎 → 角川文庫(角川書店)
ISBN : 978-4-344-01398-8 →
発行日 : 2007/10 → 2012/1/25