人々が闇に息づく魑魅魍魎を信じ、共に暮らしていた天平時代。ある事件をきっかけに親しくなった葛木連戸主と和気広虫は、少し歳は離れているものの人も羨む仲の良さ。権謀術数を巡らす重役たちの争いに否応なく巻き込まれ翻弄されるものの、持ち前の機転や時に怨霊の力を借りて乗り越えていくのだが……。
日本ファンタジーノベル大賞出身の作家氏の新刊。雑誌連載を大幅改稿の上に書下ろしを加えた今作はこれまでの著作といささか趣の違う、かわいい表紙イラストから連想するイメージどおりの物語でした。
一読してまず思ったのは、「さすがに巧い」の一言のつきますね。戸主と広虫のカップルをはじめ史実の人物を登場させ、さらに史実の事件を扱いながら、それだけに留まらず「現世と幽世」という要素を巧みに用いたファンタジーにもなっています。
登場人物ではやはり、木っ端役人ながら必要以上に権力に阿らず、自身の信念を保ち続ける主人公カップルが良かったです。様々な事件や上役たちの思惑、はては女帝の恋心に翻弄され、突き詰めていけばいくらでも陰湿になりそうな話を、あくまで軽妙に楽しませてくれたのはこの二人の性格によるところが大きいかと。つーか、「正倉院」での戸主の啖呵には惚れるかと思った。
あまり馴染みのない時代を舞台にした物語ではありましたが、ほんのり切ない気分になるラストも含め、最後まで意外なほど楽しめました。
山之口洋です。心温まる感想をいただき、ありがとうございました。ネット上ではおそらく初めてのレビューでしょう。
昨日、表紙イラスト担当の三木謙次さん(『僕僕先生』なども彼)の快諾をいただき、自サイトでイラストつきの登場人物紹介、物語紹介などを展開しはじめたところです。ぜひお立ち寄りください。
はじめまして。こんな辺境サイトにまでお越しいただいた上に過分なコメントまで頂きまして、ありがとうございます。
>心温まる感想をいただき、ありがとうございました。
なんとも拙い感想でお恥ずかしい限りですが、少しでもこの作品の魅力を伝えることができていれば何よりです。
>昨日、表紙イラスト担当の三木謙次さん(『僕僕先生』なども彼)の快諾をいただき、自サイトでイラストつきの登場人物紹介、物語紹介などを展開しはじめたところです。
>ぜひお立ち寄りください。
わぁ、紹介ありがとうございます。彼らがどのように紹介されているのか、今から読むのが楽しみです。