GA文庫から復刊中の花田氏の初期作品シリーズ3冊目。今回はカルディア帝国と彼の帝国に抗するために同盟を結んだ北方三国の間に起きた戦いと、戦乱に翻弄される人々を描いた長編。
あらすじから大軍同士の戦いがメインかと思いきや、そこに至るまでの過程のほうにより多く筆が割かれているのが特徴的。「後世の歴史研究家の視点」を通した、時代そのものを俯瞰した物語は淡々とした文体と相まって一見すると地味な話との印象を受けます。しかし、敵国間の謀略や諜報戦は勿論のこと、同盟内部での駆け引き等で意外なほど面白く読ませてくれます。
平行して描かれるのは、三国同盟の一角ゼニツア王国の密偵とカルディア帝国で暮らす遊女の物語。戦乱に翻弄された彼らの迎えた結末はやるせない。最後の騎乗姿もやはり、作中の言葉を借りれば「毅然という単語の実物」だったのでしょうかね……。
さて復刊分はこれにて終了となりましたが、あとがきによれば雑誌掲載作を収録した短編集+新作2冊が確定したようで、これは素直に嬉しい。新作も楽しみだけど、短編集も「最後の仕事」とか(うろ覚えですが)すごく面白かった記憶があるので早く再読したいです。
作品名 : 戦塵外史 三 大陸の嵐
著者名 : 花田一三六
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN : 978-4-7973-3778-5
発行日 : 2007/6/14