吸血鬼と人間の共存地帯『特区』を舞台にした吸血鬼と人間たちの物語、「BBB」シリーズ短編集第3巻。
作中時間では、3巻以後5巻以前、まだ特区がかろうじて平和を保っていた頃の兄弟とミミコの日常。内容的にはシリアスありコメディあり、描かれる絆は信頼・友情・愛情などなど各種取り揃えという大盤振る舞いで、文句なく面白かったです。単純に面白かったのは、「強い吸血鬼の育て方」と「宝くじ狂想曲」、それから「ある吸血鬼の僕」でしょうか。とある特撮に影響されたことからスパルタな兄者に泣かされるコタロー(+インターミッションでこちらもしっかり影響受けてるセイ)、宝くじに当たった!とはしゃぐミミコ(オチはそんなことだろうと思ってました)、そしてゼルマンらぶで暴走するサユカに大笑い。一方、シリアスな話ではダントツで「自由と虚ろ」がお気に入り。インターミッションに至るまで、ゼルマンの抱える虚無の根深さを思い知らされた感じ。これだけは、5巻前に読みたかったかも。他、本編では微妙に見せ場が少ないケインの懐深さが素敵な「力と誇り」、何気ない日常のようでいて5巻以降の波乱を暗示している「いつか来る、その日のために」もそれぞれ面白かった。
書き下ろしの過去編「失墜の摩天楼」は、「木曜日」が迫りつつある1929年のNYが舞台。「賢者イブ」の負う宿命の一端が垣間見えるようなエピソードで興味深かったです。あと、随分仲良くなったカーサとジローのコンビには微笑ましいような切ないような複雑な心境になってしまったりもしました。
さて、次巻は本編になるのでしょうか。あの極悪なヒキからどういう風に話が転がっていくのか、できるだけ早く続きが読めることを期待してます。……でも、5巻から6巻の間のミミコの苦難の日々を描いていると思われる短編4巻も気になる。いっそ同時発売とか駄目?