「パラケルススの娘」第5巻。前巻あとがきでの言葉どおり、大ネタが動き出した巻でありました。
今回、これまで思わせぶりに仄めかされていたクリスティーナの正体というか立ち位置というかが鮮明に。それに伴い、クリスティーナの争奪戦が開始される、というのがおおまかなあらすじ。普段なら嘲笑と共に相手を切って捨てるだろうクリスティーナの意外な一面が見られたのは素直な驚き。レギーネに縋りついてる場面など、言葉にされている以上の想いがこめられていそうで、読んでるこちらが切なくなってきました。
一方、奮闘していたのは遼太郎。英国に渡ってようやく手に入れた「家族」を守るため、自ら敵の虜囚となったり姿を隠したクリスティーナの元に辿りつき「従僕の義務」を果たす場面など、随所で優しさばかりではなく男の子らしい芯の強さや成長のあとが感じられて格好良かったです。そして、秘めていた才能が改めて示されたことで、遼太郎自身も否応なくクリスティーナの抱える事情に巻き込まれていくことになりそうで。彼の能力の詳細や役割など、気になるところです。
あと、今回敵対することになったカトリックの騎士団、具体的には騎士モーリスとシャルロットもなかなか良いキャラでした。特に、モーリスはありがちな狂信者ではなく意外に話が分かる人で、本当にもう少し違った出会いが出来ていれば……と少し哀しく思ってしまいました。
ラスボスらしき人も登場したことですし、どんな結末を迎えるのかも含め今後の展開がますます楽しみ。