異常なまでの瞬間記憶能力を持ちながら、それを取り立てて利用する事もなく平凡に過ごしてきた高校生、藤沢誠一。しかし、転校生の観池眞名との出会いにより、彼の運命は動き出す。「時置師」という神の血をひく一族。常に十人の女性によって受け継がれるその血筋で、異端の11人目として生まれた眞名と、その「対」であるという誠一。二人が対面したその時、鈴の音と共に世界が反転し……
これまでティーンズハートやホワイトハートや児童文学方面で何作か作品を発表されている作者氏の新作。これまでの作品も割と好きだったし、あらすじ読んで面白そうだったので、購入してみました。
感想としては、シリーズ第1作目としては無難なつくりというか、普通に面白かったというところ。富士ミスらしく、Loveたっぷりのなかにミステリもちょっぴり織り交ぜられてましたしね(笑)
しかし、誠一と眞名が「飛ばされた」先で遭遇した事件の結末はなんとも後味が悪かったです。ああいう結末になるのは既に定められていたことなのだとしても、犯された罪そのものは許されるものではないとしても。それでも、誰もが当たり前のように享受しているものを奪われ続けてきた子が抱いた願いが悲しい。作中でも言われているように、その状況を作り上げた周囲にも問題はあったわけですし、ねぇ……。
今回の件を経て絆が強くなった誠一と眞名ですが、次はどんな状況に陥るのか。眞名の双子の妹である眞依と、彼女の「対」である智里はどのように絡んでくるのか。あとがきで予告されている年の差カップルの登場も含めて、続きが楽しみですね。