『結晶物語 3』[前田栄/新書館ウィングス文庫]

 お伽噺や童話をモチーフにした現代あやかし譚、第3巻。収録作は雑誌掲載分の「Last Snow」と「その髪は彼が為に」、そして書き下ろし「虎神の羽衣」の3作品。ちなみにモチーフになっているのは順に白雪姫、ラプンツェル、羽衣伝説です。

 人魚刀をめぐる因縁に(一応の)決着がつく「Last Snow」は……うーん、悪くはないんだけどちょっと駆け足過ぎた印象。それでも、プリンスの亡き妻への愛情や執着やその他諸々がないまぜになった想いは、彼がどの道辿ることを約束されていた結末のこともあってか、哀れながらも切なく感じられて良かったですが。「その髪は彼が為に」は、このシリーズはまさかホラーっぽい結末はあるまいと思っていただけに、意外な終幕に思わずひやり。彼女、この後どうなるんでしょうねぇ……。一方、それとは対称的に書き下ろしの「虎神の羽衣」は後味の良い話でした。こちらは終盤まで「これはまた切ない終わり方になるんだろうか」とやきもきしていたので、いつもどおり適当に言い繕った黄龍の台詞をきっかけに、あの二人がそう遠くない先に添い遂げられそうな方向に動いたことに一安心。

 さて、雑誌では今月号で最終回を迎えたこのシリーズ。確か、ストックは1話のみのはずだから、次の巻では書下ろしが多めになりそうか。これまでのパターンからいけば、最後の四神がらみの話になるのかなーといろいろ想像を巡らせつつ、最終巻を楽しみに待ちたいと思います。

作品名 : 結晶物語 3
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著者名 : 前田栄
出版社 : 新書館ウィングス文庫(新書館)
ISBN  : 978-4-403-54108-7
発行日 : 2006/8/1

『デュラララ!!×3』[成田良悟/電撃文庫]

 池袋を舞台に、それぞれ何かがキレた連中が繰り広げる群像劇、第3巻。今回は特に、高校生3人組を中心にしたエピソードになってます。

 セルティはいつの間にか新羅とらぶらぶで一番平穏な生活を送ってるし、シズちゃんは相変わらずキレまくってるし、臨也はとことん外道だし、遊馬崎&狩沢も相変わらずだし、ちょい役ながら某葛の人の親戚は迫力満点で恐ろしいし、新羅父はこれまた変なキャラで面白い……と、個々の要素を取り上げればこれまでと同じく面白いと思うのですが、読了後には消化不良感が残りました。原因はやっぱり、高校生3人組の結末がああだったことかなぁ。いや、最後のチャットの場面とかは好きですけどね。でもなんというか、個人的にはもっとちゃんと3人の関係にケジメつけて欲しかったなーと。あとは、強さのインフレが気になったりもした。

 何はともあれ、次巻以降はまた別のエピソードが来るようですし。今回登場した新キャラたちもまたいろいろ絡んでくるだろうし、いろいろ楽しみではありますねー。

作品名 : デュラララ!!×3
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著者名 : 成田良悟
出版社 : 電撃文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-04-866636-7
発行日 : 2006/8/10

『夏の日のぶたぶた』[矢崎存美/徳間デュアル文庫]

 先月に引き続き、書き下ろしで登場のぶたぶたさん。出版は久々に徳間デュアルから。……そういや、このレーベルの本を買ったのも随分久しぶりな気が……。

 それはさておき、今回の話。今回は珍しく短編集形式ではなく、一話完結の中編。内容としては、ある夏、ぶたぶたと出会った少年の成長物語ってところでしょうか(←要約しすぎ) うーむ、別に悪くはなかったんだけど、正直期待していたほどではなかったというか、なんだか普通でした。まぁとりあえず、私としては、ぶたぶたさんは短編形式の方が好きなのかもなぁ、と思ってみたり。

 どーでもいい独り言。表紙がぶたぶたさんの写真じゃなかった事が地味にショックでした。光文社版は無理でも、徳間デュアル版はきっと写真に違いないと信じてたのに(めそめそ)

作品名 : 夏の日のぶたぶた
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著者名 : 矢崎存美
出版社 : 徳間デュアル文庫 → 徳間文庫(徳間書店)
ISBN  : 978-4-19-905163-0 → 978-4-19-893708-9
発行日 : 2006/8 → 2013/6/7

『Y十M -柳生忍法帖- 4』[山田風太郎(原作)・せがわまさき/ヤングマガジンKCスペシャル]

『Y十M』(せがわまさき/ヤングマガジンKCスペシャル)4巻購入&読了。予想通り、水の墓場は随分マイルドな描写に。まぁ、あのままな描写は出来ないだろうしねぇ。その代わりに、というのもあれですが、お圭さんが無惨に朽ちた堀の男の死骸を目にして我を忘れる描写がオリジナルで付け加えられることで状況の悲惨さを演出してました。それにしても、ヒキにはある意味とんでもない場面がきましたな(笑)