『ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人』[小湊悠貴/集英社オレンジ文庫]

同じオレンジ文庫で小料理屋を舞台にした「ゆきうさぎのお品書き」シリーズを展開されている作者さんの新作は、横浜の小さなホテルを舞台にした物語でした。

読了後、「こんなホテルがあったらリフレッシュに泊まってみたいなあ……食事美味しそうだし」と真っ先に思いました(食欲旺盛)
それはさておき、物語の中心となるとなるのは、3年弱勤めたパン屋を師匠と慕っていた店主の急病による閉店でやむなく離職したパン職人の紗良。祖父が勧める結婚を断った彼女は、同じく実家を離れているパティシエである叔父の紹介で横浜・山手にある「ホテル猫番館」の面接を受けることになって……という導入。紗良の他、ホテルの料理長やオーナー親子に焦点を当てた作品が4編収録されています(ちなみに、各話の間にはホテルの看板猫・マダム視点の掌編もあり。) メイン人物となる紗良はいわゆる「良家の子女」ながら、とある出会いをきっかけにパン職人の道を志したという女性。若いながらもしっかりした自分の意志と仕事に対する誇りを持ち、行動する姿は好印象。そんな彼女と接する登場人物たち、それぞれ抱えている屈託は現実離れしたものではないけれど、それ故に当人たちには一笑に付せるものではなく。彼らが作中で悩み考え、時に紗良の真っ直ぐな言葉がほんの少し後押しにもなって一歩を進み出すその過程は素直に応援したくなるし、一山越えたあとの姿には良かったなーとしみじみ。

劇的な展開や盛り上がりはないけれど、優しい気持ちになれる素敵な1冊でした。続編が出たら嬉しいなあ。

作品名 : ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人
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著者名 : 小湊悠貴
出版社 : 集英社オレンジ文庫(集英社)
ISBN  : 978-4-08-680251-2
発行日 : 2019/5/22

舞台「PSYCHO-PASS Virtue and Vice」を観てきた話。

令和最初の観劇で、近未来SFアニメシリーズ「PSYCHO-PASS」のスピンオフ舞台・大阪公演に行ってきました。以下、考察とかは特にないふわっとした感想(ネタバレ有)
あ、ちなみに私のシリーズ履修具合は、アニメは映画含めて全部見てるけどノベライズまでは追ってないレベルです。
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『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 1「case.剥離城アドラ」』[三田誠/角川文庫]

Fateシリーズ派生作のひとつ。Fate/ZEROと同じくTYPE-MOON BOOKS(自費出版)で発売されていたシリーズの、一般流通書籍版。
内容は、第四次聖杯戦争で生き残った少年ウェイバーが、諸々あって「時計塔」の君主(ロード)・エルメロイⅡ世(以下、ロード)となってさらに数年後。第五次聖杯戦争が始まる少し前に、必然として遭遇する様々な魔術的事件を解き明かしていく、広義のミステリ。Fate派生作品としては、他作品が本編と多かれ少なかれ本編と「ずれた」世界の物語とされているのに対して、この作品は同一軸で展開されているのが特徴。

で、この1巻。ロードの内弟子であるグレイを主な語り部として、死去したある魔術師の「遺産」に絡んで発生した事件が展開されていきます。ミステリとしてはまあ、前提条件として魔術が実在する世界ですし読者側に必要な情報・知識が適切に開示されているかといえば首をひねることになってしまいますが、ロードがあれこれと考察する場面等でミステリ気分は問題なく味わえるかと。
Fate他TYPE-MOON作品の一角を担う作品としては、タイトルにもなっているロードだけでなく他作品のキャラの出演や世界設定の補強・掘り下げ等が物語を邪魔しない程よい分量で盛り込まれているので、読んでてニヤリとできます。逆に、そのあたりの情報がまったくない方がどう感じるのかはちょっと気になる。
キャラクターとしては、時間を経ていろいろ変わったところもありつつ、根っこの部分はわりとそのままなロードの姿が実に好み。終盤の「ボク」と「私」が入り混じった一連の語りの場面とかラストのとある人物に返した言葉とか読むと、最終的には……なのが分かっていても彼の夢が叶うことを願いたくなりますね……。あと、事件簿が初登場となるグレイやちょっとだけ登場したロードの義妹ライネスは、あらためて読むとグレイに関しては意外な素性が明らかになったりアドラでの出来事を通して精神的な変化が描かれたりはしたけれど、まだ顔見せ程度で各自の色はさほど出ていない印象。まあ、彼女たち(そしてこの後の巻で登場する面々)については今後のお楽しみということで。

アニメ化が決定している5冊目までは毎月発売されることが決まっているようなので、のんびりシリーズ再読するつもり。自費出版版最終巻も今月発売される予定なので、楽しみにしてます。

作品名 : ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 1「case.剥離城アドラ」
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著者名 : 三田誠
出版社 : 角川文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-108074-0
発行日 : 2019/4/25

『Fate/strange Fake(5)』[成田良悟/電撃文庫]

数年前のTYPE-MOONエイプリルフール企画に端を発したFateシリーズスピンオフ作品、5巻目。内容としては4巻で始まった病院前のバトルがメイン。バトル描写に力が入った反動なのか作中時間がほとんど進んでいないのは良いのか悪いのか。

感想としてはいろいろとあるんですが、とりあえず一番は「フラット君のヤバさがまた跳ね上がった……」でしょうか。以前の巻で死徒化は効率悪いからやらないと言ってたけどそっちの方法はありなんだとか、デュマに訝しがられたりアルケイデスには「何か」を察せられたりとか、早く設定全部明かしてほしいなあ……。あ、それと出番少なめでしたがエルメロイⅡ世がフラット君のことを心配してる(&教室の卒業生たちに少し言及があった)ことにほっこり。なんだかんだあってもこれだけ心を傾けてもらえるなら、そりゃあフラット君も教授に懐くよね。その他、デュマの能力ある意味無茶苦茶だなとか、警官組がかっこいいな!とか、最初の脱落者(?)があなたになるんですか!とか、シグマ&偽アサコンビが急速にメイン主人公っぽくなってきてるようなとか、ウルク組が揃ってまたやばい感じになってきたとか、いろいろと気になることはたくさん。ラストで病床の繰丘椿が作り出した世界に引きずり込まれた組と、現実世界に残っている組に別れたことになりますが、ここからどう展開していくのか気になるところ。特に、椿ちゃんに相対する組は、彼らが知らぬところで嗤うジェスターの言葉をどうやって覆えしてくれるのかなー(覆してくれないと逆にキツイ)
そうそう、今回も本家Fateや派生作品からの小ネタは読んでてニヤリとしましたが、FGOプレイヤーの大半が「そこのところもっと詳しく!」となったであろうデュマとエドモンのやりとりの完全版がいつか読めますように……いっそFGOにデュマ実装して幕間やってくれてもいいよ……

さて。まだまだ風呂敷を広げまくっているようにも感じるこのシリーズも、あとがきの作者氏の言葉によればこれで中間点らしく。この聖杯戦争がどんな形で収束していくのか楽しみにしつつ、成田先生にはご無理はなさらないよう心から願っております……

作品名 : Fate/strange Fake(5)
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著者名 : 成田良悟
出版社 : 電撃文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-893519-7
発行日 : 2019/4/10